カブトムシ、オジさんを嗅ぐ

お家柄の差で、好きなひとと結婚できなかったオジさんと、それにまとわりつくカブ(わたくし)の、恋愛に至らない日々

今電車

ガハッ!

瀕死の重体である。

カブは重体。

 

あのひとから電話があった

って、オジが言った。

 

え?と、目を見開いて止まってしまった。

その前に何か話をしていたのに、その話の内容は忘れた。

 

もう何年も電話なんてしてないのに、どうしたんだろ?って思ったら、仕事して欲しいんだって

って。

 

オジの仕事は職人仕事。

今もやってるよね?やって欲しいんだけど。

って。

 

だからって、オジと同じ職種、仕事してる人はあのひとが住んでる土地にもきっといっぱいいる。

おひとりさまを謳歌して順調にに仕事していい車乗って趣味にあちこち飛び回ってるひと。

こういうお金をそんな風にケチるような人間ではないって知ってる。

 

カブは、あの子に関しては、チョットいやだけど、まあ仕方がない。カブよりも早く知り合ってカブよりもよく知ってて悪い子ではなかったら、付き合いを無しにする必要だってないもの って、思ってる。

仕方がない。

 

でも、あのひとは嫌。

いやいやいや。

 

今日まで、オジはあのひとのことを忘れてなくっても、いつかまた…って願ってても、女って結構薄情で、熱い想いも 別れ っていう出来事のあとは段々薄れていって、誰かと一緒にならなくたって前のひとを求めることなんてそんなにない って思ってた。

 

幸せになること って結婚だけじゃなくて、おひとり様だって充実してることが幸せであったりする。結婚してない女が不幸なわけじゃないし、結婚しないからってあなたを待ってるわけじゃないかもしれない って。

だから、もしもオジが、いつかの未来 を願ってたとしても、そんな日来ないんじゃないか って。

 

でも違ったのかも。

そんな未来は 来ることもあるのかも。

 

何年も連絡してこなかったひとが、今になって連絡してくる。

それは、今までは必要なことでもなくそうする意味もなかったのに、何か風向きが変わったからじゃないか。

すぐ近くにいるわけでもない。

何県もまたいで、わざわざ用事をつくってやってくる。

 

そんな時、ただ仕事をして、終わったからじゃあね、なんて、そんなわけない。

ご飯でも食べようか、積もり積もった話でも…になる。それはなる。

 

そんで、縁ってやつが、また 結ばれたりしたりするんだ。

 

もうだめだ。

べそをかいて帰る。

カブは瀕死。