カブトムシ、オジさんを嗅ぐ

お家柄の差で、好きなひとと結婚できなかったオジさんと、それにまとわりつくカブ(わたくし)の、恋愛に至らない日々

帰りの空気に何を思うや

カブしぼー。

再起不能だ。

 

オジと車の友達のとこへ遊びに行った。

この友達は、知り合いになって三年くらいかと思う。カブとオジで出会った友達。

 

車の話をわやわやしてるうちに、オジがすごい車にいっぱい乗ってきてることとか、秘密基地と家を同時に買っちゃったこととかお金のこととかの話になり、オジはその人に、

「ボクのことについては、話したことありませんでしたっけ」

って、オジのこれまでの話をし始めた。

 

カブは知ってる。

オジはお金持ちなんかじゃない。お金持ちみたいだった時もあるけど、どん底だった時もある。

今はそこから持ち直して、やっと楽しくなってきてるとこ。もしかしたら、ずっと楽しくなんかないのかもしれないところ…

 

そんで、そんなどん底の、今日食べれるか明日生きられるか…

の時を救ってくれたのが、

「◯◯ちゃん(あのひと)じゃんね!」

って、カブに振り向く。

そう言われる、今言われる…って思ってたカブの顔はどんなだっただろう。

すごく曖昧な顔をした気もするし、ニッコリうんうんってできたのかもしれない。

友達に「その人は誰なんですか?」って聞かれて、

当時付き合ってた彼女で。住むとこもないから住まわせてくれて、車なんかもなくなっちゃって。ボクに車がないなんて考えられなかった。けど。車だって…まあ、買ってくれたんだよねえ…

なんて。

 

他にも、車関係のやんちゃな人たちの方が、真っ先に声をかけてくれた。ボクは、そういう一番大変な時を助けてくれた人たちに本当に感謝してるんですよ。だから、本当は車なんか買ってる場合じゃないんすけどね。あの人たちに、何かお返しをしないと…

って。

 

せつな。

何年そばにいたって、毎週会ってたって、頑なな心でオジはあの時から変わらない気持ちで生きてるんだ。

こんなに一緒にいるんだから、きっと何かが動いてる って思ったりしてたのに、1ミリも何も変わってないんだ。

 

あのひとは

ずっと絶対動かないでオジの心に居続ける。

 

それはそうだと思う。

そんなにしてもらったんだから、それはそう。

でもさ。だってさー。

けど、だったらずっと独りでいろ ってのも暴言で。

人は人と繋がってないといられない。

別に選ばなくたっていいんだ。決めなくたって居ることはできる。

だけど。

選ばれないのに選ばれたカブはオジにとっての何なんだ。

 

誘い続けたから繋がったのに。

呼ぶから行くのに。

呼び続けるからずっと居るのに。

こんなやりとりの一瞬で、70くらいかもしれないって思ってた繋がりが0になる。

 

会ったばかりの時、何でオジはカブを誘ったんだろう。断っても何回も誘ったんだろう。なんでずっと呼ぶんだろう。ばかだし。