カブトムシ、オジさんを嗅ぐ

お家柄の差で、好きなひとと結婚できなかったオジさんと、それにまとわりつくカブ(わたくし)の、恋愛に至らない日々

下書きと この先

『オジの環境がまた変わる。

 

独立して、いい感じにやって行けそうな展望が見えたオジは、知り合いに間借りしている事務所と、お母さんと住んでいる家と、カブと借りている秘密基地の賃料を合わせたら、事務所兼住居を借りられるのではないか…と、家を探し始めた。

 

カブは、今よりも遠くへ行ってしまったら、結構行き来が大変になるなぁ…と思いながら、何も言えない。

こんな時、カブは オジにとっての何でもない って、思い知る気持ちになる。

 

空き家になった昭和民家を一緒に見に行った。

80年代の家。

懐かしい感じ。まさに、オジやカブが大人になるまでに暮らしていたような家。

ちょっと遠い。カブが今まで通り行き来するには少し距離がある。

ここで決まっちゃうのかなー…と思っていたら、「住む家を変えるのは、ちょっと難しいかな、って思う」

って、何日か後にオジが言った。

「母親と話してて。やっぱり、仕事行って そこの人たちと会って喋って、それが楽しいんだって思う。それが出来なくなるのは、やっぱりなぁ…」

って。

カブもそれを思ってた。

 

カブの家にもじぃちゃんがいる。

今年90になるのだけれど、歳をとった人の住まいや環境を変えるのはなかなかに難しいことだと想像がつく。

コミュニティが変わることで生活が変わる。

ウチのじぃちゃんは、もう働きには出ていないし、人付き合いも苦手なよう。まったく家から出ない。

元々そういう人だから、今から、衰えの防止に外に出ろとか習い事しろとか言っちゃったら、逆にそれが辛いことになる。

オジのお母さんは近所に働きに出ていて、そこへ出かけることとかあってお話しする人とか、そういう環境が大事。

 

ちょっと気になってたことを、オジがちゃんと考えてることに、やっぱりね。って、ニッコリする。

そういうひと。だからいい。

んまあ、その家の立地とか仕事上の交通の便が悪いっていうのも多分にあるけど。

 

で、そんなことをオジはずっと考えて、色んな物件を探してたんだろうなー、って、日々の話題から感じてた。

 

続く☺︎』

 

という下書きを、随分前に書いた。

まだまだここに書き足すことが増えていく間にコロコロと状況が変わって、

 

カブのうちのじぃちゃんは、亡くなってしまった。

この家で、存在だけでカブの全てを許してくれていた義父は、いなくなってしまった。

まだ、思うと涙が出るし、考えると胸が潰れる。

毎日、深く考えることを止めて、淡々と生活している。

感情をころしている。

 

 

そして、ここからまた、カブの自由は形が変わるのかな、と思う。

望むように変わるのか、その逆か。

まだ わからない。