カブトムシ、オジさんを嗅ぐ

お家柄の差で、好きなひとと結婚できなかったオジさんと、それにまとわりつくカブ(わたくし)の、恋愛に至らない日々

日々暖機

休みの日には ほぼ着替えをしない人間だった。

 

夫がいたら 早く起きても掃除もできないし、昼食は 当たり前に出てくるものだと思われている。

着替えたってどこにも行かないし。

出掛けたって買い物くらい。昼には家にいなきゃいけないし。

洒落たってしょうがない。

 

 

 

オジさんは、出会ってから、自分の休みの日は たいていカブを誘ってくる。

 

はじめは全然そんなつもりがなかったから、いつも大慌てで着替えて支度をして家を飛び出していた。

 

だんだん、油断しているとお呼びがかかるので、とりあえず 朝はいつも通り起きて 化粧をするようになった。

 

その頃は、男の人に呼ばれるなんて…と、着るものは 取っ替え引っ替え、気張りすぎないでもちょっとお洒落して…スカートなんかはいちゃって…

と、まあまあ頑張った。

 

オジさんだって、その頃は カブが喜ぶこと好きそうなところ…って、ひとを楽しませたい人だから、色んなところに連れて行ってくれた。

 

仕事場にも、休みの仕事とか 外部の人がいても問題ないような場所は 連れて行ってくれたりした。

 

考えてみれば、あの頃はお互い、どうにかこのひとを引き寄せていたい って気持ちはあったんじゃないだろうか。

それが、恋愛という感じじゃないとしても。

 

 

 

今は。

オジさんは変わりない。

ファッションは、いつも カーゴパンツとTシャツ。ポケットがたくさんあるから。

 

カブも、たいていパンツとTシャツ。

 

オジといても、ロマンスは起きることはないし、行く場所は 大体 古道具屋か倉庫だ。

 

洒落たってしょうがない。

 

でも、気持ちは落ち着いた。

あの頃みたいに いつもフラフラして行く場所を探すんじゃなく、一緒に居る場所 ができた。

 

 

今、お互いやるべき事があって遊んでられないけど、

 

朝は Tシャツを着て、化粧をする。