カブトムシ、オジさんを嗅ぐ

お家柄の差で、好きなひとと結婚できなかったオジさんと、それにまとわりつくカブ(わたくし)の、恋愛に至らない日々

あの子は正しい

オジさんを好きな女の子がいた。

 

前の職場で一緒に働いてた中国人の女の子だった。

 

その頃、オジさんと出会って間もないカブは、その子のがんばりを オジさんから直接色々聞いてた。

 

アパートに遊びに来ては ご飯を作ってくれる。

ご飯、多いんだよね。お国柄だけど、全部食べたら足りない っていうのが駄目って感じで、すごい量作る。

でも、食べきれないし…

泊まっていくこともある。

泊まるの!?

 

その頃のオジさんは、夜遊び普通で、カブを会社のバーベキューに誘った時には、自分の友達に 夜のお店の話とか平気でしてた。

結構具体的なエグいことも…

カブは、ビールを飲みながら 聞こえないふりをした。

 

そんなんで、女の子が家に上がったら…ていうことをネタにして、

どうしたらいいと思う?

と、カブに聞いた。

 

家に上がって泊まっていくって、僕はどうするのがいいんだろう?

泊まる って、そういうことでしょ?

布団は一組しかないし。

女の子がそういう部屋に来たら、手を出さない方が返って失礼なのかなあ…って。

 

カブは、

うーーーんーーー…

まあ、それはそうだよね。

そんなつもりじゃなかった とか言われても、え?!ってなるし。

逆に 何にもなかったら、こっちにだって 女のプライドみたいのあるし…

傷つくのかもしれない…

 

みたいな問答をした。

 

それは、具体的にその子のことを指して言ったわけではなく、そういう時って…っていう例え話で、

その時オジさんがどうしたのかは知らない。

ただ、同じ布団で手を繋いだりしてくる

とかは言ってた。

 

ご飯作ってあげても、ナイトネズミーに一緒に行っても、オジさんの 本当の心 は彼女の手には入らず、たぶん、それを ちゃんと感じてた彼女は、何回か帰国して戻ってを繰り返しながら努力したけど、

結局、帰ってしまった。

 

オジさんの仕事場の、カブと共通の友達は、彼女が可哀想だった ってカブに話した。

仲良くしてくれるのに 心は見えない。つかめない。

すごくよくわかる。

 

オジさんが仲良くしてる他の女の子を カブは気に入らないけど、

いや違う。女の子が気に入らないんじゃなくて、そうしてるオジさんが 気に入らない。

けど、

その子は、カブは 嫌いじゃなかった。

会ったことないけど。

 

オジさんが仕事を変えて実家に戻る時、アパートの掃除手伝って って言われてイソイソ出かけたカブは、

もっ!もしかしたら、ナニかあるかも?!

って、ドキドキしながら その無機質な部屋に上がった。

 

何もない部屋で、不動産屋さんのチェックが来るまで、何もする必要のないほどキレイな風呂場を一人で磨かされ、何事もなく 部屋を後にした。

ぷ、プライド…

 

そんなオジさんを、ここまでずっと信頼している。