カブトムシ、オジさんを嗅ぐ

お家柄の差で、好きなひとと結婚できなかったオジさんと、それにまとわりつくカブ(わたくし)の、恋愛に至らない日々

それでも明日の話をするの

人生は五十年くらいでいい。

 

オジさんは、人生五十年論者だ。

昔はだいたいそのくらいが人の一生だった。

医学とか食べ物とか、そういうものが変わっていって、人は長生きになった。

 

長生きになっただけじゃなく、病気になっても死にそうでも、無理やり生かされている人がたくさんいる。

そういうのは、不自然だと思うんだよね。

僕は 五十年でいい。

 

それは わからなくはない。

カブも、長生きをしたいとは思ってない。

でも、生きてるんだから生きていくしかない。

 

一昨年、オジさん、健康診断で 要再検査が出た。

大腸検査 引っかかったって。

再検査行くよね?

行かない。

行こうよ。

行かない。それはそれ。もし何かあっても、僕は病院には行かない。

 

オジさんは、決めたことを曲げない。

きっと、カブのいうことなんか聞かない。

その結果が出る理由として、思い当たる節がある。多分大丈夫。

って言ってたけど、もしも、もしも良くない病気とかあったら…

って思ったら、どうにもよしとできない。

何にも言えないけど、何日も泣いた。

 

オジさんは、今も元気に生きている。

もうじき五十になる。

大切な人が自ら死を選ぶという事は、間接的にその人をおもっている人を殺す事だ

って。友達が言った。

もし、オジさんが死んだら、カブの何分の一かは、必ず死ぬ。

 

今年も健康診断行ってください。