オジさんが。
出かけると、カブの愛車のETCに 自然にカードを入れてくれる。
なんか…
やっぱりこのひと好き って思う。
カブは、オジさんに好まれているわけではない と思っていた。
オジさんは、元々なのか 結婚したかったあのひととお別れしたからなのか、女の人に対する執着がない。
でも、女の人を好きではある。し、男である。
だから お店にも行くんだろう。
執着がないんじゃなくて、執着しないようにしているのだろうけど、その態度があまりにもあっさりとしているし、今まで出会った全てのオスと全く違うので、緊張感とか警戒心が全くなくなる。
オジさんは、人が好きで 女の人も好きで 淋しがりで 一人で過ごすのをつまらないと思っている。
出会った頃 頻繁に誘われたのは、別に カブを気に入ったわけではなく、いい暇つぶしができたと思ってるんだろぅ、と、考えなしに考えていた頃は 思っていた。
他に付き合ってくれる子がいないから。
ちょっと 面白そうだから。
カブが 人懐っこそうだから。
人生が 暇だから。
人生五十年論を持論とするオジさんは、早く人生を終わらせてしまいたいし、あのひとがいないなら この先の生は、あってもなくても同じ。と思っているんだろう。
だけど、生きているなら生きていくしかないし、つまらない毎日を 誰か付き合ってくれる人がいたらそれでいい。
“人生の暇つぶし” に カブは、今 の相手として 選ばれたんだな。
オジさんは、何を考えてるのか分からない、どう思ってるのか読めない人だった。
あまり笑わないし、表情も声色も、怒る時以外はさして変わらない。
なんか、虫とか爬虫類みたいな人 って、思ってた。
それが不思議すぎて、もっと知りたくて、歯を見せて笑って欲しくて笑わせたくて、ここまできた。
オジさんは、歯を見せて笑うと カワイイ。
その顔は、オジさんの ニィちゃんに似てる。
今、カブばっかり喋ってきたけど、自分のことばっかり聞いてもらって付き合ってもらってきたけど、
でも、この長い付き合いの中で、少しずつ少しずつ滲みださせてきたオジさんの人間性が、ちょっとだけ見える。
オジさんは、いいひと。
し、格好いい。
カブは、このひとと ずっといたい。